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台湾アーティストが「抱擁・小豆島」に込めた思い
2025.9.26
瀬戸内国際芸術祭の1回目から参加しているアーティスト ワン・ウェンチーさんは、竹を使った巨大なドーム型の作品「抱擁・小豆島」を作りました。
地元の人たちが竹4000本を切って、準備をして、ワンさんの到着を待ち、今年3月頃から建設がはじまりました。
6回目ともなると、地元の人たちも竹の枝を事前に落としておくなど、ワンさんが使いやすいように準備をしてくれていて、まさに小豆島のワンチーム。
2025年3月 急ピッチで作品を作るワンさんとこえび隊とワンさんの仲間たち
ワンさんは、阿里山鉄道で有名な台湾の嘉義県というところの出身。
嘉義県の阿里山地域は、日本統治時代に森林開発されたところ。密度の高い純林で、ヒノキなど建築資材にも使える良質な木が豊富で、当日、阿里山林から伐採された木材は日本の神社仏閣にも使用されました。
かつて「木都」として栄えた阿里山は、今も森林資源が豊富なところです。
そして阿里山林業村には、シンボルとして、ワンさんの手がけた藤やヒノキを使った巨大なドーム(「森林之歌」)があり、訪れた人が木と共に生きてきた場所だということを感じることができます。
そんな嘉義県は、台湾でも高齢化が進んでいる地域だそうで、ワンさんにとって、瀬戸内の島の過疎化、高齢化は他人事とは思えなかったそうです。
嘉義県では森林に、小豆島では棚田に思いを寄せる――
嘉義県では、その地域にとっての森の存在を小豆島では、中山地区の棚田の存在を肌で感じることができる作品を手がけたワンさん。
ワンさんの作品「抱擁・小豆島」の中から、田んぼをながめると、中山地区で生きてきた人たち、今も景観を守り続けている人たちに思いを寄せ、この作品を作ったことを伺い知ることができます。竹を使っているため、恒久作品にはできません。
「抱擁・小豆島」ぜひ、秋会期に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
作品紹介 「抱擁・小豆島」 ワン・ウェンチー〈台湾〉
瀬戸芸で「大地の芸術祭」をちょっとだけ味わって
2025.9.24
瀬戸芸の玄関口、高松港に「SETOUCHI KITCHEN」という屋台があるのは、ご存知でしょうか?
実はこのセトウチキッチンは、新潟県十日町市で3年に一度開催されている日本で最初にはじまった地域芸術祭「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」で人気の「TSUMARI KITCHEN」が出張で、お店を構えてくれています。スタッフはなんと、越後妻有から来てくれているんです!
カレーや天ぷらなど、瀬戸内の旬な食材を活かしたメニューなんですが、屋台だと侮るなかれ、新潟で鍛え上げた料理の腕前が光るおいしさです。

「SETOUCHI KITCHEN」

この日のメニューは「天ぷら」でした
ごはん、汁物、さかな、一品料理、瀬戸内のお酒でおもてなし。メニューも日によって替わるので何度も楽しめます。
この日は、季節の天ぷらでした。
なかなか新潟には行けないけれど、高松港で、ぜひおいしい料理を堪能してみてください!
もし、大地の芸術祭に行ったことがある、もしくは行ってみたいという方は、スタッフにお声がけしてみてください。とっても喜んでくれると思います。
「SETOUCHI KITCHEN」
【定休日】水曜
【営業時間】11:30~13:30(昼2時間)、16:30~18:30(夕2時間)
【メニュー】焼き魚定食やおかず、おでんなど
奴奈川(ぬながわ)キャンパスは、2014年に閉校した小学校をまるごと利用した「大地の芸術祭」の施設。「見ること」以外の要素を含んだ、全身で楽しむアートを展開しています。
オフィシャルツアーにご参加のお客様のみが楽しめる「TSUMARI KITCHEN」も併設されています。
「こえび隊」は海を越えて
2025.9.22
瀬戸内国際芸術祭のサポーターとして、こえび隊というのがあります。
ボランティアで、その日その日に活動できる人が受付をしたり、作品のメンテナンスをしたり、草刈りをしたり、大島でガイドをしたりと、活動は多岐にわたります。
メルマガに登録して、活動できる日程だけポチッとすると、お知らせが届くというもので、誰でも参加できます。
わざわざ岡山・香川で、ボランティアで芸術祭に関わる人なんているのかな?と心配したこともあったんですが、2010年から2019年ののべ参加人数は約40,000人で、18%は海外からの参加者です。
実は、私も何度かこえび隊活動しているんですが、人気の活動は、あっという間に埋まり落選も。(こえび隊活動は、想像以上にいろんな人と知り合えて、体を動かす活動なので文化祭的なノリで楽しいです)

2022年秋 大島でこえび隊の様子
ハチを撃退するのもこえび隊のお仕事。

中国からこえび隊として来日した男性(男木島にて)
今回の取材中にも男木島で中国からわざわざ来てくれたこえび隊に出会いました。16歳の彼は、「日本の地方創生で成功している島があると聞いて、こえび隊をやってみたいと思って来ました。今日は、お客さんが比較的少なくて暇だー(笑)」と、話してくれました。

こえび隊の経験を活かして馬祖ビエンナーレ(台湾)で活躍するボランティアの女性
また海を超えて、台湾の離島の芸術祭(馬祖ビエンナーレ)でも、こえび隊を経験した26歳の女性が離島に1カ月滞在してボランティアとして芸術祭を支えています。彼女は、こえび隊の経験を活かして「もっと島民と触れ合いながら、芸術祭と島民との距離を縮めたい」と、話してくれました。

瀬戸内のご婦人たちにも負けず劣らず元気いっぱいな馬祖ビエンナーレ(台湾)のボランティアの女性
まさか、瀬戸内の小さな島での経験が、こんなにも世界に広がっているとは、驚きました。それと同時に、こんなにも近くで、そんな体験ができることがとても光栄なことだと考えるようになりました。
作品鑑賞ももちろんいいんですが、こえび隊という楽しみ方もオススメです。
「手袋ギャラリー」作品、今後の公開決定
2025.9.19
瀬戸内国際芸術祭2025は、新たに香川の東側(東かがわ市、さぬき市)がエリアに加わりました。同じく秋会期に加わる宇多津町を含めると、香川県の海岸沿いの市町村、全てエリアが芸術祭の魔法にかかります。
特に、東かがわ市では「産業」に光を当てるという芸術祭でも初めての試みが行われました。
東かがわ市の産業といえば、手袋。国内生産の手袋のほとんどが、実は、ここ東かがわ市で製造されています。しかし「国産」とは、記されていますが「東かがわ市産」と記載されることはありません。ましてや、東かがわ市の企業名やブランド名が表に出ることもほとんどありません。世界でも、町をあげて手袋を製造するという場所は、ここ以外にないとも言われているほど、すごいことなんです。そこでタオルなら今治、メガネなら鯖江のように、手袋なら東かがわ、と言われる日が来ることを信じて、日本手袋工業組合は、今回、瀬戸芸に全面協力することを決めました。
ところが、何もかもがはじめてのことで、組合のみなさんは、アーティストの描いたスケッチ画を見ても、会場となる手袋ギャラリーの内装画を見ても、全く想像もできなかったそうです。しかも高松よりも東側が会場となった前例もなく、お客さんが来てくれるかどうかは、蓋を開けてみなければさっぱりわからない状況でした。夏会期が刻々と迫る中、地元の婦人会がみなさんから集めた古着を切ってつなげた布で、巨大な手袋を編みました。
作品紹介 「みんなの手 月まで届く手袋を編もう!」 レオニート・チシコフとマリーナ・モスクヴィナ夫妻〈ロシア〉 ※モスクヴィナが物語を書き、チシコフが絵画や立体作品を手がける
日本手袋工業組合の棚次啓ニさんが取材に応じてくれました。
この作品の熱量が、本当にすごいんです。
ロシアの作家さんのスケッチと、オンラインミーティングだけを頼りに、手袋製造を支えてきたご婦人たちが、ボランティアさんらとともに完成させました。手袋製造を支えてきたご婦人たちだからこその色合いや形だと思います。この圧倒的な熱量が来場者を魅了。InstagramなどのSNSでも大人気となり、多い日は、直島を越える来館者があったと言います。
この反響ぶりに驚いたのは、なんといっても組合の方や地元の方々。こんなにたくさんのお客さんが来てくれたなら…と、当初は、夏会期だけの公開予定だったこの作品が、今後も見られることになりました。
秋会期の始まる10月以降は、土日祝のみ「手袋ギャラリー」を会館し、あの作品が公開されることになりました。瀬戸芸で東かがわ市を訪れてくれた方みなさんの笑顔が東かがわ市や組合を動かしたんだと思います。
ぜひ、番組を見て、東かがわ手袋ギャラリーを訪れたいと思ってくださった方も、立ち寄ってみてください。
東かがわ手袋ギャラリー
2025年10月4日以降 土日祝 開館
詳細は、東かがわ市地域創生課まで
電話:0879-26-1276
瀬戸内で活躍したアーティストの今①
2025.9.17
瀬戸芸には、世界中からアーティストが参加しています。瀬戸内に滞在し、瀬戸内の海や風を感じた彼らにとって、瀬戸芸での経験が次のステップにつながった人たちがいます。
台湾の染色アーティスト、ウェイ・リン・ヤンさんは、2016年、小豆島の廃校で海を表現した作品を作りました。そして今年、万博に合わせて、台湾文化を知ってほしいと開催した大阪の展示会「WE TAIWAN」では、台湾の伝統工芸でもある藍染めを使って、再び海を表現した作品を発表しました。海の水は、地球を巡る水でもあり、海を通して自然環境にも思いを馳せてほしいと、彼女は考えています。
約12年ぶりに再会したヤンさんは、今も変わらず柔らかな空気をまとったステキなアーティストです。これからの作品も楽しみです。
作品紹介 「回遊」 ウェイ・リン・ヤン〈台湾〉
瀬戸内で活躍したアーティストの今②
2025.9.17
台湾のアート集団ラグジュアリー・ロジコ[豪華朗機工]〈台湾〉のメンバー、リン・コンインさんは、2022年の瀬戸内国際芸術祭で開催された「瀬戸内アジアフォーラム2022」に登壇。この時、リンさんの地域への思いや、プロセスを大切にする考え方に、共感したという北川フラムさんは、2023年に石川県珠洲市で開かれた芸術祭「奥能登芸術祭」で、ラグジュアリーロジコの作品を展示することに。
しかし、芸術祭直前の5月5日に震度6強の地震が能登半島を襲い、芸術祭の開催が3週間延期してしまいました。地元の土木関係の職人さんが復旧作業に従事するなか、作品の製作もストップ。そんなときに手を貸したのが小豆島の工場だったそうです。
そうして、無事作られた作品がこちら。
作品紹介
「家のささやき」
ラグジュアリー・ロジコ[豪華朗機工]〈台湾〉
能登の黒い瓦を使ったこちらの作品は、瓦を通して、「記憶」、「家」、「人口」、「産業」など、素材と地域問題の関連性を表現しており、能登の歴史と暮らしに思いを馳せるものとなりました。
そして、芸術祭が終わった直後の2024年1月1日、最大震度7を記録した能登半島地震に襲われた今、能登は復興の最中にあります。そんな中、被害を免れた「家のささやき」は、今もしっかりと能登の土地に根をおろし、地域の人に愛されています。
