「災害対策という言葉を多くの人に伝えていきたい」80万人以上のフォロワー有する、警視庁警備部災害対策課のTwitter担当者にインタビュー

80万人以上のフォロワーを有している、警視庁警備部災害対策課のTwitter。
災害時に役立つ豆知識や便利技を投稿し、毎回その内容が大きな反響を呼んでいる。
運営のキーマンである災害対策課の村田警部に、
投稿に込める思いや都民・国民に伝えたいメッセージについて尋ねた。

警視庁警備部災害対策課 村田尚徳警部

警察が持つ情報をリアルタイムで伝えたい

―災害対策課がTwitterを始めた経緯を教えてください

2011年3月11日に発生した、東日本大震災がきっかけとなりました。
大規模な災害が起きると、いわゆる「デマ情報」が流れることがありますが、
当時も「コンビナートが爆発する」とか「有害物質を含んだ雨が降る」といった情報が流れていました。
そのとき災害対策課には、警察が持っている正しい情報を、東京都民・国民の皆さんにリアルタイムでお伝えする術がありませんでした。そこで“情報発信”ということが課題になっていました。
課題解決のためにはどうすればいいかを考えた結果、インターネットは災害時も比較的通信が途絶えにくいということで、SNSを使おうということになりました。
Twitterを選んだ理由は拡散力です。ツイートしたものがリツイートされ、さらにリツイートというように、こちらがツイートしたものがあっという間に届く、また警視庁のアカウントを知らない人のところにも、リツイートを通じてさらに拡散していくということで、Twitterが良いのではないかと考えました。
警察の持っている正しい情報をできるだけ多くの人に伝えていく、そのような狙いで始めたものです。

―今のような投稿を始めたのはいつ頃からですか?

いまのようなスタイルになったのは2017年頃からです。
基本的に平日1日1ツイートを続けています。
内容は、災害・防災に関することだったら何でもいいというスタンスでやっています。

―毎日災害対策課の皆さんが投稿しているんですか?

30~40人が交代で投稿していて、1~2ヵ月に1回当番が回ってきます。
1人の担当者がずっとやっているとアイデアも浮かびにくいですが、交代制にすることで、それぞれの個性が生かされます。性別や年齢に限らず、例えば小さな子どもがいる、動物を飼っている、料理が好き、釣りが好き、街歩きが好きなど、警察官にもいろいろな趣味やスタイルがあります。犬を飼っている警察官が犬のツイートをすると、犬に興味がある方は非常に関心を持ってくださいますし、料理のツイートをすると、料理が好きな方が興味を持ってくれます。そうすることによってフォロワーが徐々に拡大していっているのかなと思います。

警察官としての目線で試してみる

―ネタはどのように選んでいるのですか?

全てが自分たちのオリジナルではなくて、災害に関するアンテナを常に高く張っておいて、新聞、テレビ、雑誌や防災に関する本などから情報を仕入れています。そして情報はそのまま投稿するのではなく、警察官の目線で実際に試してみて、皆さんにお伝えしたいな、おすすめしたいなというものを選んで投稿しています。

今までで一番反響が大きかったのは、2017年10月の「10円玉で袋を簡単に開ける方法」という投稿で、いいねとリツイートの合計が27万件以上あります。
簡単にできるとか身近にできるとか、すぐに役立ちそうな内容が、反響が大きいですね。

―それ以外にはどんな投稿がありますか?

東京に被害がない災害でも、例えば2016年の熊本地震や2018年の西日本豪雨のときなど、警視庁から応援部隊が出ているときは、現場活動の写真や、救助に携わった隊員の思いなども載せています。災害に関心を持ってもらうことが一番大切ですから。

―フォロワーからの嬉しかった声や反響などはありますか?

「役に立ったよ」とか「ありがとう」と感謝されるのはもちろんですし、印象に残っているのは西日本豪雨の際の出来事です。救助活動の様子を投稿すると、「私は行くことはできませんが、私の故郷をよろしくお願いします」というコメントをいただいたことがありました。Twitterをやっていなければ聞くことのできなかった声ですし、現地で活動する警察官にもこういう声があったよと紹介してあげると、気持ちが全然違ってきますよね。

災害対策という言葉を広めたい

―日々の投稿を通じて伝えたいメッセージは何ですか?

とにかく災害に関心を持っていただきたいということです。
私は「災害対策」という言葉が独り歩きしても良いと思っています。皆さんのスマホに災害対策という言葉が伝われば、1人1人が自分なりの防災意識を高めたり、災害について考えるきっかけになったりすると考えているからです。
日本では毎年のように大きな災害が起こります。“防災”という言葉はありますが、災害の発生自体を防ぐことはできません。ただ皆さんの意識次第で、被害を減らす“減災”はできると思いますので、そこにつながれば非常にありがたいなと思っています。

―今後の展開はどのように考えていますか?

できるだけ多くの人に発信した分だけ、情報が伝わっていくと思いますので、フォロワーの拡大はもちろん目標としています。いまのところ100万人を目指したいと個人的には思っているのですが、そのためにはできるだけ多くの方に関心を持っていただけるようなツイートを毎日していかないといけませんので、引き続きツイートを頑張っていきたいと思っています。

―最後に、地方の人たちに伝えたいことをお願いします。

私たちがTwitterをやっていることにもつながるのですが、スマートフォンの充電器を持ち歩くなど、停電対策をしておいてください。
東日本大震災のときも、あちこちで停電が起こりました。テレビが映らなくなったとして、おそらく今はラジオを持っている方も少ないと思います。ただスマートフォンは多くの方が持っていますよね。災害時には貴重な情報の収集源となりますが、充電がなくなってしまうと何も分からなくなります。当時より、スマートフォンを持っている人はずっと増えていますから、その重要度も、ずっと増してきているはずです。

村田尚徳(むらた・たかのり)

茨城県出身。2003年に警視庁入庁。
北沢署、第三機動隊等を経て、2017年から警備部災害対策課。

インタビュー:中村康人 執筆:笠原慎太郎