KSBセレクションとは・・・
KSBが制作した作品の中から、受賞作品や反響の大きかったものを厳選して放送。
どの作品も制作者が熱い思いを抱き、独自の視点で迫った珠玉の一品です。
過去の放送
2017年9月10日放送
死への大脱走の果てに~70年目のカウラ事件~カウラシリーズ(3)
- 一次放送日
- 2014年9月7日
番組内容

太平洋戦争中の1944年8月5日、オーストラリアの捕虜収容所で日本人捕虜約1100人が集団脱走し、234人が死亡した。カウラ事件である。脱走というより、死を覚悟した自殺的な暴動だった。オーストラリア側の捕虜の待遇はジュネーブ条約にのっとった人道的なもので、日本人捕虜は充分な食事が与えられ、野球や花札、麻雀などの娯楽に興じていた。
だが、下士官と兵の分離移動命令に端を発し、状況は一変。全員の投票により、約8割が脱走に賛成。捕虜になることを恥とした「戦陣訓」に象徴される旧日本軍の方針とその場を支配する「空気」に流されやすい日本人の国民性が生んだ悲劇だった。

2014年、事件は70周年を迎えた。現地では記念行事が5日間にわたって盛大に行われた。事件の生存者が少なくなる中、日本からただ1人参加した元捕虜の男性、参加を願いながら断念した元捕虜でハンセン病療養所に暮らす男性とその思いを伝えるべく現地に向かう高校生たち。事件をテーマにした演劇を記念行事の一環として上演する日本の劇団。
事件により受けた傷から立ち直り、日豪間の友好と平和都市としての歩みを続けてきたカウラ市の人々。それぞれを追いながら、事件が現代に問う教訓と70年後の「今」を考える。
※番組内容は取材当時のものです。
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クワイ河に虹をかけた男
~最終章・たったひとりの戦後処理~
制作者より
私が制作したカウラ事件についての番組としては3作目です。事件を生き残った元捕虜の人たちも多くは鬼籍に入り、70年の記念式典に参加したのは鳥取県の村上輝夫さんただ1人でした。瀬戸内市の立花誠一郎さんは健康面などから参加を断念しました。未だに消えない自分はなぜ生き残ったのか、という悔悟の念。立花さんの思いを引き受けて現地に向かった高校生。オーストラリア人俳優を加え、演劇で事件を問い直した坂手洋二さん率いる燐光群。悲惨な事件を日豪友好へと転化させようと努力してきたカウラ市民。それぞれの事件への真摯な向き合い方が平和の礎となっていることを感じ取っていただければと思います。
(取材・構成 満田康弘)