KSBセレクションとは・・・
KSBが制作した作品の中から、受賞作品や反響の大きかったものを厳選して放送。
どの作品も制作者が熱い思いを抱き、独自の視点で迫った珠玉の一品です。
7月3日 放送分
クワイ河に虹をかけた男~最終章・たったひとりの戦後処理~
- 一次放送日
- 2011年9月25日(テレメンタリー2011)
- 受賞歴
-
第18回 PROGRESS賞 奨励賞
平成21年日本民間放送連盟賞 中四国地区 教養番組部門 優秀賞※※2008年制作関連シリーズ
「テレメンタリー2008 最後の巡礼~元陸軍通訳の終わらない戦後~」にて受賞
番組内容
2011年8月。KSBの満田康弘記者はタイに向かっていた。ひざに抱えたバッグには永瀬隆さん(享年93)と妻の佳子さんの遺骨があった。「自分が死んだらクワイ河に散骨してほしい」。永瀬さんの遺言だった。
永瀬さんは、太平洋戦争中に旧日本軍が建設した泰緬(たいめん)鉄道の犠牲者の慰霊と元捕虜との和解に一貫して取り組み、135回タイを巡礼。タイから引き揚げる12万人の日本軍にタイ政府が米と砂糖を支給してくれた恩に報いようとタイからの留学生の受け入れや看護学生などへの奨学金授与を続けた。94年、満田記者は初めてタイへの同行取材を果たす。現地では、永瀬さんに握手を求めてきた元捕虜がいる一方、冷たい視線を浴びせかける元捕虜もいた。

2008年、体力の限界を感じた永瀬さんはタイへの巡礼に一区切りをつけようとする。偶然か必然か、クワイ河鉄橋の上に虹がかかって、永瀬さんの労をねぎらった。しかし、病気で同行を断念した妻の佳子さんは納得しなかった。翌09年、佳子さんは病室から4年ぶりにタイに向かう。元気を取り戻したかに見えた佳子さんだが、そのわずか3カ月後、この世を去る。一人になった永瀬さんに一気に衰えが訪れる。

2011年6月、入院した永瀬さんに、往年の鋭い舌鋒は残っていなかった…。「クワイ河に虹をかけた男」は彼を慕う人たちの手によって愛するクワイ河に帰った。
※番組内容は取材当時のものです。
映画情報
劇場用ドキュメンタリー映画「クワイ河に虹をかけた男」近日公開
シネマ・クレール岡山で7月9日(土)から先行上映
http://www.ksb.co.jp/kuwaigawa
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クワイ河に虹をかけた男
~最終章・たったひとりの戦後処理~
制作者より
泰緬(たいめん)鉄道の贖罪と和解に生涯を捧げた永瀬隆さん。長年取材をさせていただくうち、その最期に立会い、遺言に添ってクワイ河への散骨を引き受けることになった。永瀬さんがその生き方で身をもって示した平和への思い、ヒューマニズムを感じ取ってほしい。国に代わって個人で戦後処理を背負った男の人生を見てほしい。また、永瀬さんの活動に妻の佳子さんの存在がどれほど寄与していたかにも注目してほしい。
(取材・構成 満田康弘)